事務所設立と新ブログについて

久々に更新しました。

弁理士として昨年4月に登録し、以後弁理士としての活動は順調に(?)続けています。継続研修も、半年で60単位には余裕で到達するくらい、順調に研鑽を続けています(5年間の必須単位数が60なので、単純計算で他弁理士の10倍の努力値です(笑))。

ただ、やはり業界の閉塞感に耐えられない、本当はもっと業界として変化できるのに上から抑え込まれている、と感じ続けています。そんな思いがあって、私事ですが、個人事務所を設立しました。今は勤務先と個人事務所の2か所に所属している形です。といっても、今は付記試験の勉強で手一杯なので、本格的な活動は10月以降になる予定です。また、

事務所ブログは以下。重た~い実務記事を読みたい方はアクセスしてみてください。

特許実務の集約を目指す from A to Z for IP (hatenablog.com)

2週間に一回を更新目標とします。アクセス数を気にすると、弁理士試験ネタを何年も書き続ければいい、という結論になってしまいそうなので、アクセス数はいっそ気にしません。多くの人にとって、勉強=受験or資格勉強、なんでしょうか?

ブログをはじめるとどうしても更新を急いでしまい、本ブログではほとんど中身のない記事もありますが、上記ブログでは、自分なりに納得できる状態、誰かに付加価値を感じてもらえる状態の記事以外はあげません。内容としては、根拠の明らかではない実務の研究、知られているけど図解したらもっと誤解なく理解できる基礎知識などをとりあげていきます。

ネット上の実務記事は事務所の宣伝目的で編纂されたものが多く、弁理士試験の超基本的な知識をそのままひっぱってきたものだったり、根拠が不明だったり…業界にとってマイナスにしかならないものも多いように思います。インターネットの「情報へのアクセスのしやすさ」という利点が、「積み上げ不要、数分で素人にも理解できる確立した知識」をコピペするだけの記事を氾濫させる結果となっており、特許実務に真剣に向き合うことと真逆の方向に行っているのでは?と思ってしまいます。

私は単に価格を下げることだけが顧客サービスだとは思っていません。一文言選択で侵害成否が決まる世界、ディテールにこだわることが許される世界、どこまでも研究が必要な世界だと思っています。正直、企業側で、特許事務所のつくった明細書をチェックする側に回ったほうが「利口」だよな…とは思っています。そのくらい、特許事務所側で何年も仕事を続けるのはキツイです。ブログを書く時間、付記試験の勉強のための時間すら、なかなか捻出できません。それでも私は、自分が必要性を感じられる限り、特許実務の研究に向き合い続けていきます。逆に、これ以上研究の余地がないという状態になったら、つまり、もうやることがなくなったら、私はこの業界を去ります。

 

たまーにアクセスがあるようなので、本ブログもぼちぼち続けます。

内容が単なる愚痴にならないよう、誰かのためになるよう、地道に続けています。

今年の弁理士試験で出そうなネタ

・不責事由

コロナの影響で、各種手続きについて救済が認められていることから見るに、コロナは弁理士試験で習った「不責事由」に該当するようです。今年の弁理士試験にでるかも?

https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/covid19_tetsuzuki_eikyo.html

 

(これが言いたかっただけです…)

なお、弁理士試験は9月以降に延期だそうですね。

司法試験が延期になったので、倣ってそうなるとおもっていましたが。

9月以降から、短答論文口述からの年末からの研修→4月に登録

って現実的に間に合わない気もしますが、時期を遅らせてでも、勉強してきた受験生の皆さんの要望に応えた方がましですね、おそらく。

本当、コロナでみんなの人生かわりますね。人生で脆弱なものだとつくづく思います。

あなたなら何があっても大丈夫、だなんて本気で言われたりしてきましたが、そんなことはない!人生は脆弱だ!と自信を持って言えます。

 

『どうして自分を責めるんですか?

 他人がちゃんと必要な時に責めてくれるんだからいいじゃないですか。』

By アインシュタイン

各国特許庁のコロナ対策(ゆる纏)

コロナの影響で皆さん大変な状況かと思います。疫病で危機迫る世界って、古典的なSFの世界ですよね。まさか現実になるとは。。AIとか言ってる世界と、疫病で危機迫る世界が併存してるだなんて、誰も想像できなかったことでしょう。皆さんの健康を祈願しております。

 

私は現在リモートワークをしています。

リモートワークの感想ですが…なんていうか本当の意味で「使える人」「使えない人」が明らかになってしまう気がします。正直オフィスで働いているからこそ雑用で何とか誤魔化せてた人材が一気に不要になる気がしています。実際、「リモートになったらあの子に何任せたらいいんだろう?」と愚痴っている方がいたりして。

顧客の根強い紙文化もコロナの影響で改善?に向かっています。顧客に紙を送るためだけに事務メンが出勤していた状況は何とか改善されました。

担当顧客が昭和な会社でリモートで面談とかできないため、年度末の大波から打って変わって、新件すべてペンディング、中間処理とかPCT草案だけ消化している余裕の状況です。せっかくなので、各国特許庁のコロナ対策を自分用にざっとまとめます。

もうすでに色々な特許事務所でまとめが上がっているので、今更ですが。。

 

 

各国特許庁のコロナ対策(ゆる纏)

JP

4/3付でやっとコロナ対策の発表があった・・

https://www.jpo.go.jp/news/koho/info/covid19_shutsugan.html

めっちゃ対応遅い。

しかも、「意見書」の提出期間は指定期間だから、救済措置の対象、「手続補正書」の提出期間は法定期間だから上記救済措置の対象にならず、個別相談要、というなんとも煩わしい対策( ^ω^)・・・

なお、救済が認められていることから見るに、コロナは弁理士試験で習った「不責事由」に該当するようですね。今年の弁理士試験にでるかも?

 

US

3/27~4/30deadlineの応答期限等の延長について、個別対応。コロナの影響での遅延があったことをstatementdeclaration,affidavitじゃなくてOK!)にて説明する必要あり。

→どの程度のstatementが必要なのかさっぱり。。USPTOのFAQ(4/6付け)では、コロナによる延長が認められる基準として、手続きが「materially interfered」されたことが挙げられていました。

 

EPC

3/15以降にdeadlineがある手続きは、4/17まで全件自動延長(すばらしい…けど4/17ってもうすぐじゃん、と思ったら4/17以降も事態が改善しないようなら続報ありとのこと)

 

CN

個別で救済措置あり。理由を説明する必要があるそうです。詳細不明…

 

KR

OA応答等の指定期間が2020331日から429日までの期間内に満了する場合、当該期間の満了日を2020430日まで職権延長

→一応、職権で許可が下りた場合に限られるっぽいです。基本的に認められるものなのか不明。。

 なお、面談も制限されており、対面での補正案レビューは断られました(3/27現在)。

 

というか、KIPOの英語のHP,internet explorerでしか開けないの勘弁してほしい。

(EPC)製造方法と単純方法の区別

さて、各国で製造方法と単純方法の区別がされているか調べるシリーズ、EPCについてです。

結論:製法と単純方法の区別なし

特許法64条が、US、INとよく似た規定となっており、

 欧州特許の対象が方法である場合は,特許によって与えられる保護は,その方法によっ て直接得られる製品にまで及ぶ、旨が規定されています。

 

  Article 64  [ 54 ]
Rights conferred by a European patent

 
  (1)
A European patent shall, subject to the provisions of paragraph 2, confer on its proprietor from the date on which the mention of its grant is published in the European Patent Bulletin, in each Contracting State in respect of which it is granted, the same rights as would be conferred by a national patent granted in that State.
  (2)
If the subject-matter of the European patent is a process, the protection conferred by the patent shall extend to the products directly obtained by such process. 
 
雑談:
弁理士実務修習で、「魚介類の養殖方法」の発明のカテゴリーは何なのか、
講師に質問してみましたが、
実体的に判断して、「製造方法」扱いになるのでは?とのことでした。

(韓国)製造方法と単純方法の区別

各国で製造方法と単純方法とが法的に区別されているか?の続きです。

年度末多忙により、更新は亀の歩みですが、最後に表にまとめる予定です。

 

さて、韓国について、特許法の規定は日本と極似しており、

2条3項で、①物の発明、②方法の発明、および③物の生産方法の発明、がそれぞれ規定されています。

つまり、日本同様、単純方法と製造方法の発明が、「明文上判然と区別」されている形です。

ということですので、韓国については、日本と同様、発明のカテゴリーに注意して出願する必要がありますね。

 

第 2 条(定義) この法で使用する用語の意味は、次の通りである。
 1.“発明”とは、自然法則を利用した技術的思想の創作として高度のものをいう。
 2.“特許発明”とは、特許を受けた発明をいう。
 3.“実施”とは、次の各目の 1 に区分による行為をいう。
 イ.物の発明である場合:その物を生産・使用 ・譲渡・貸与又は輸入したりその物の譲渡又は貸与の請約(譲渡又は
貸与のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
 ロ.方法の発明である場合:その発明を使用する行為またはその方法の使用を請約する行為
 ハ.物を生産する方法の発明である場合:ロ目の行為以外にその方法によって生産した物を使用・譲渡・貸与又は輸入したりその物の譲渡又は貸与の請約をする行為
 

(特許実務メモ)国際公開公報(WO公報)の公開を防ぐには?いつまでに取り下げるべき?

「PCT出願したはいいけど、WO/ISAがボロボロで、このままじゃ移行しても権利化の可能性が低い」、

「もう一度ブラッシュアップして、出願し直したい!」っていうこと、あると思います。

そんなときは、PCT出願が公開されてしまう前に、出願取り下げないと、

新規性が失われて、出願し直しができなくなってしまいます。

ご存知の通り、PCT出願は優先日から18月経過後に公開されるので、それまでに出願を取り下げることが必要です。

ただ、よく弁理士試験で出題されるように、日本国特許出願については、「出願を取り下げても、公開の準備が終わっていれば出願公開されてしまう」んですよね。

さて、国際公開公報(WO公報)の公開を防ぐには?いつまでに取り下げるべきでしょうか?

 

最近、顧客からタイトル通りの問い合わせが来て、もちろん即答できなかったので、

WIPOに問い合わせてもらいました。結果、

優先日から17.5月位までだったら取り下げ可能」

「公開日が近づいてきたら、電話で公開日を問い合わせすると正確な公開日を教えてもらえる(ただし、問い合わせ時期早すぎると、公開の準備ができていないことも…)」

とのことです。

 

ただ実務は刻刻と変化するものと考えられますので、

こんな情報を信用せずに、必要なときにWIPOに問い合わせることをお勧めいたします。

何かあっても私は一切責任を負いませんW

こんな自由に情報書き残せるのも、誰も訪れないブログの特権ですよね。

(特許事務所)残業時間が短ければホワイト?

ただの個人的な体験についてのお話ですが、

残業時間が短い=楽、ホワイト

…とは限りません‼️

私は、2年前まで有名なブラック事務所に勤務していましたが、残業時間は短かったです。平均して15時間程度でしょうか。

でも「超」大変でした。

今は月平均30時間程残業しており、

ピンチのときには8時間残業(!)したこともありますが、

「全く」大変ではないです。

違いは「時間の使い方」です。

前職ではとにかく時間管理がキツく、

短時間で仕事することが求められており、

時間内に仕事できないと呼び出されて叱責されていました。残業しないときちんとこなせない仕事量なのに、残業すると時間使いすぎだと叱責される。

毎日消耗しきって、終業後に勉強するなんて考えられない状況でした。調べ物も家でこなすことを求められており、日々時間の使い方がチェックされる監視社会だったので、とにかく気が休まらなかったです。


対して今は仕事の量自体は前職よりも少なく、仕事の「質」を高めるために時間を使っているだけなので、ラクですし、何より楽しいです。


例えるなら、前職では30分間の全力疾走、

今は1時間のウォーキングです。

前者の方が圧倒的に「ラク」ですよね?

しかも世間では残業多い方が大変、という誤解があるため、前者の働き方をしている人は後者の人からバカにもされる始末です。辛いですよね…


ホワイト特許事務所の見分け方について、個人的には、

「顧客以上に所員の成長を大事にしているか?」

がホワイト事務所かの良い判断基準になると思っています。

所員の成長のために時間とお金を使えない事務所なんて見限った方がいいです。膨大な量の翻訳を押し付けられて、毎日疲弊するだけになるのがオチです。


また、トップが明細書作成経験あるかどうかも重要です。トップが世襲で明細書ろくに書いたことない人間だと、単に件数ばかりを要求され、質へのリスペクトが非常に低くて苦労しますよ。